悠久の絃
自然と口に出てしまった。目尻から一筋の涙が零れた。

椎名「ん?どうした?」


椎名先生はもしもしするやつを胸から離し、シャツを戻してくれた。


瑛杜「絃ちゃん?どないしたん?」


瑛杜先生も優しく背中を擦りながら聞いてくれる。


「……怖い。」


椎名「何が怖い?話せそうか?」



ふと、我に返った。椎名先生や瑛杜先生に言っても治療は無くならない。

「なんでも、、ない、です。」


椎名先生は少し困った顔をしてわかった、と頷いた。


瑛杜「ホンマにええんか?」


「はい。大丈夫です。」


椎名「今日はここで吸入するから。そのために俺が今来た。」


そうだったのか。たしかに、いつもなら瑛杜先生だけでもいいのに。
でも、いきなりもくもくはちょっとやだ。


椎名「昨日は上手く出来ただろ。」



私が嫌だと思っているのを汲み取ったかのように、椎名先生は機械をセットしながら声をかけてくれる。


小さな機械が白い煙を吐きながら、口元に近づいてきた。


瑛杜「ゆっくり、落ち着いてもくもくを吸ってな。」


そう。落ち着いていれば苦しくならない。昨日椎名先生に教えてもらった。

椎名先生に背中をさすってもらいながら、10分経った。


椎名「ん、終わり。今日はもう吸入しなくていい。」


瑛杜「絃ちゃんもくもく上手やな。後でまた来るな。」


椎名先生は私が残したご飯を持って、瑛杜先生は「悠は午後から来るで。」と言って部屋を出ていった。











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