悠久の絃
ただ広くて白い病室に1人。

1人でいると不安にしかならない。悠先生に会いたい。
今日の治療、夜にやるって言ってた。それまでに戻ってくればいいよね。


そう思って病室を出た。


点滴のスタンドを持ちながら廊下を歩いていると、色んな子を見かける。みんな病気だからここにいるんだよね。私も病気だからここにいる。

でも、ここにいる子達はみんなお父さんやお母さんが一緒にいる。
私も、お父さんとお母さんに会いたい。もう居ないってわかってるけど、会いたい。
そう考えれば考えるほど、胸が苦しくなるってもう知ってるのに余計考えてしまう。



気づけば廊下の一番端まで来ていた。


昨日、夜星先生と少しお散歩した時、今と同じ場所に来た。でも、昨日はこの場所に階段はなかった。
壁だと思っていたものがドアで、その奥に階段があった。
スタンドを少し浮かしながら階段を降りた。
すごく重かったけど、何とか降りることができた。


前に悠先生が小児科は4階って言ってたから、ここは3階かな。




なんとなく廊下を歩いていると、明らかに病室ではない部屋に入っていく人を見た。気になってその部屋の前に行くと扉に

Library

と書かれている。
英語は読めない。でも、気になるから入ってみることにした。










驚いた。

中に入った瞬間本に囲まれたような気がした。いや、囲まれた。部屋の隅から隅まで本が並べてある。


少し戸惑いながら進むと、誰にも見つからなそうなスペースを見つけた。そもそも、ここにあまり人がいない。でも、少しでも人がいると思うと部屋にいる時よりも安心する。

面白そうな本を手に取り、さっき見つけたスペースでページをめくった。










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