悠久の絃
椎名「何してる!」

えっ?と思って声のする方を見たら椎名先生がいた。


椎名先生はあっという間に私の目の前に来た。そして悠先生が持っていたものと同じものをポケットから取り出して、私の口元に当てた。

プシュ

「ハァハァ…ゲホッ…ハァハァ…ハァハァ…」


たった1回で呼吸が楽になった。


椎名「悠、お前は医局に戻ってろ。それと、凑を起こしてすぐに病院に来させろ。」


赤城「わかった。」


え。何。どういうこと。みなとって誰。

椎名先生は私の方に振り向いた。


椎名「今、お前は悠に近づいて欲しくない。でも、俺は大丈夫。そうだろ?」


たしかに。椎名先生は怖くないし嫌でもない。

「はい。」


椎名「うん。なら、聴診していいか?」


椎名先生なら大丈夫。

そう思ってシャツを捲った。


椎名「ありがとう。じゃあ深呼吸して。」


椎名先生の長いもしもし。でも今は何も考えられない。ただただ呼吸に集中した。


椎名「いいよ。今、痛いところはある?」


痛いところ。腕が痛い。悠先生の抱っこされて走った時に痛くなった。

「ここ。痛い。」



そう言って、点滴が繋がれた腕を見せた。
点滴が刺さっているところは血が滲んでいた。


椎名「針がズレたんだな。刺し直そう。」


そう言って腕を押さえてテープを剥がした。


椎名「ちょっと痛いぞ。」


椎名先生は針を抜いて消毒した。
ちょっとじゃない。かなり痛い。


椎名「じゃあ、刺し直すぞ」


チクッと針が刺された。

「ッッ!痛い…」


椎名「ん、もういい。お腹は?痛くないか?」


お腹。お腹は痛くない。でも、昨日のことを思い出してしまう。


「、はっ、、ひゅっぅ、、はぁ、、はっ、」


思い出すとまた呼吸が変になる。もうやだ。


椎名「大丈夫。今は痛くても治療しない。」


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