悠久の絃
夜が明けて、いつの間にか瞑っていた目を開けると、人影が見えた。

誰かがいる。どうしよう。

不安になってぎゅっと目を瞑った。


??「絃ちゃん?起きた?」


聞いたことの無い声。誰なの?


??「絃ちゃーん。お話しようよ。俺、自己紹介したいんだけど。」


やっぱり。あったことない人だ。

恐る恐る目を開けた。


??「ふふっ。可愛いね〜。おはよ。背中上げるね。」


そう言ってリモコンを操作してベッドを起こした。



日向「こんにちは。俺は日向凑って言います。俺は児童精神科っていう所に研修医として、今働いているんだ。児童精神科って名前難しいから、絃ちゃんの相談係だと思っておいて。」


椎名先生が言ってたみなとってこの人だったんだ。

この人もなんだかふわふわしてて、瀬堂先生と同じ匂いを感じる。



日向「俺ね、絃ちゃんのこといっぱい知りたいの。絃ちゃんの好きなもの、嫌いなもの、教えて。」


好きなものも、嫌いなものもない。

とりあえず、首を横に振ってみた。


日向「んー、そうかー。でも、今絃ちゃん悠と話せないんでしょ?」


え、、、なんで知ってるの。

いきなり、悠先生の名前が出てきて驚いてしまった。

昨日はみんな名前を出さなかったのに。



日向「悠のこと嫌いになっちゃった?それとも、治療が嫌で悠とか、夜星先生とかが怖くなっちゃった?」




「......わかんない。」


すっごく小さな声が出た。うまく口が開かなくて、言葉が言えない。



日向「ん?ごめん。聞こえなかった。もう1回言ってくれる?」







日向先生の「もう1回言ってくれる?」という言葉で、私のストッパーが全て外れた。









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