恋の毒
 これだけの熱量で感想を言われるのは初めてで、少しは耳を傾けてもいいかなと思った。


 すると、高城君は流暢に話し始める。


「よく、なにを感じるかは人それぞれって言うでしょ? でも俺は、俺が感じたことしかわからなくて、他人の考え方なんてどうやって知るんだろうって思ってたんだ。だけど、鳴海さんの作品を読んで、ようやく理解した。小説を通して、自分とは違う考え方に触れて、周りの人をわかろうとすればいいんだって」


 自分の作品が、ここまで他人の考え方に影響するなんて、知らなかった。


 やはり、聞いてよかったらしい。


 今後の執筆に活かせそうだ。


「俺、鳴海さんのかっこいい考え方、好きだな」


 根暗な考え方をそう言い換えるのは、違うと思う。


「そうだ。鳴海さんの書く明るい話とか読んでみたいんだけど、書かない?」


 その一言で、喜びを感じていた私の感情は、一瞬で地に落ちた。


 感想を言われるのは嬉しい。


 どう感じたのかを具体的に伝えてくれるのも、ありがたい。


 でも、リクエストをされるのは嫌だった。


 執筆する中で、私は自由でいられる。


 なにを思って、なにを書いても、誰にも文句は言われない。


 それを世に出すと、自由ではなくなるけれど。


 ただ私の世界を表現するだけだとすれば、自由だ。


 その自由を、壊さないでほしい。
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