恋の毒
「書かない」


 その気持ちは、強すぎる言葉として出てきた。


 高城君は少し驚いた顔をして、笑顔を作った。


「そっか。わかった」


 人との関わり方が上手になれなかった私が悪いのだけれど、気まずい空気は耐えられなかった。


 このまま、高城君が私とは話さないほうがいいと決断してくれれば、問題ないのだけど。


「じゃあもし、気が向いて書くようなことがあったら、教えてね。絶対読みたいから」


 高城君は、その程度で他者との関係を切るような人ではなかったらしい。


 それにしても、明るくて楽しい話なんて書く気はさらさらないけれど、また強く否定して、そんなことをする自分を嫌いになりそうだったから、私は無言を貫いた。


「鳴海さんっていつから小説を書いてるの?」


 会話が、終わらない。


 どうしたらこの人は会話を終わらせてくれるのだろう。


 これほどに興味を持たれたことなんてないから、迷惑よりも、戸惑いが勝る。


「陽、それくらいにしておきなよ。鳴海さん、超困ってる」


 すると、私の心の声を聞き取ってくれたようなタイミングで、一人の女子生徒が間に入ってきた。


 彼女は高城君に気付かれないように、私を睨んできた。
< 4 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop