恋の毒
 私が話しかけているわけではないのだから、恨むべきは私ではないと思う。


「優花、人が話しているときに間に入るのはよくないよ」
「一方的にだらだらと長話をするのも、どうかと思うけど」


 それに関しては、同感だ。


 きっと彼女は高城君が私のところにいることが気に入らないだけなのかもしれないが、それでもいい。


 とにかく、一秒でも速く、私の時間に戻ってほしい。


「そっか……じゃあ、また今度話そうね、鳴海さん」

 高城君は虚しく一人で手を振り、彼女といつものメンバーのもとに戻った。

 ようやく穏やかな時間に戻ったというのに、高城君の『またね』という言葉が気になって、読書に集中することができなかった。





 帰りの支度が整って、私は席を立つ。


「鳴海さん、一緒にカラオケに行こう」


 見計らったように、高城君は笑顔で言った。


「行かない」


 高城君は頬を膨らませる。


 むしろ、なぜ私が行くと言うと思ったのか。


「じゃあ、ラーメン?」


 代打案でそれを選んでくるのもよくわからず、私は無視をして教室を出る。


「やっぱりカフェとかがいい?」


 高城君は折れずに、ついてくる。


「あれ、鳴海さん帰らないの?」
「図書室」


 そう言うと、足音が聞こえなくなった。


 どうやら、彼は図書室には興味がないらしい。


「そのまま、私からも興味をなくしてくれたらいいのに」


 そんな私のささやかな願いは、叶わなかった。
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