【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
葬儀はカトリーナが邸で仕事をしている間に行われたのだと聞いた。
カトリーナが屋根裏に帰ればもう誰もいない。
『母』としての形がなくなったとしても、カトリーナは何も感じなかった。
ただ少しだけ、呼吸がしやすくなったような気がした。

それからいつもと同じ日常が始まった。
いや、少し違うかもしれない。

侍女達が母がいなくなった時から、ほんの少しだけ優しくしてくれるようになる。
サシャバル伯爵夫人が見ていない間だけは話しかけてくれたり、仕事を代われば食べ物をくれると言った。

いつもお腹が空いていたカトリーナは仕事をして、侍女達から少しの食べ物をもらっていた。
哀れみが込められた視線を感じながら、そこで初めてカトリーナは優しさに触れたような気がした。

そんなカトリーナを見て、いつも馬鹿にするように笑っている少女がいた。
それがサシャバル伯爵と夫人の愛娘、シャルル・サシャバルだった。

今まではサシャバル伯爵夫人にカトリーナ達の前に行くのを禁じられていたらしい。
穢らわしいから近づくな、と。
シャルルはカトリーナを蔑むような目でいつも見ている。
カトリーナを見る目はサシャバル伯爵夫人と同じだと思った。
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