【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
カトリーナがナルティスナ領に行ってから暫く経つが、当たり前だが何の連絡もない。
今頃、野垂れ死ぬか捨てられているかのどちらかだろうと思っていたが、今では何を言っても動じないで文句もなく朝から晩まで働いているカトリーナがいなくなったことを惜しいと思っている自分がいた。

(こんなことなら、わたくしが嫁ぐまであの女がここにいればよかったのに……!)

けれどシャルルの脳内にこびりついて離れないのはドレスを着せた時のカトリーナの美しい容姿。
透き通るようなホワイトベージュの髪と人形のような大きな瞳と形のいい唇。
それが父にそっくりで腹が立つ。
思えば、幼い頃に見たカトリーナの母親もとても美しい女性だった。
最後は見る影もなかったが。

(なんでこんなにわたくしが、こんな思いをしなくちゃいけないのよ!全部あの女のせいなんだからっ)

いつまでもグズグズと鼻を啜りながらグラスの破片を片づけている侍女に暴言を吐き掛けながらシャルルは部屋に戻る。
今はベル公爵の怒りが落ち着くまで、サシャバル伯爵邸で大人しくしろと言われて、シャルルは数ヶ月も退屈な生活を強いられている。
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