【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
カトリーナは薄汚れた服の裾をギュッと掴んで待っていた。
先程、全ての雑用を終えたカトリーナは食事の許可をもらい夜の食事をもらうのだ。
サシャバル伯爵夫人の許可がなければ何も与えてもらえない。

一日中、働いていたカトリーナはお腹が空いて仕方なかった。
あまりものではあったが、子供の時とは違ってカビも生えてないし固くもない。
お腹いっぱいとまではいかないが、カトリーナにとっては十分な食事だ。

早朝から休む間もなく働きっぱなしで、疲れからかカトリーナを眠気が襲う。
しかし三人の話し合いはなかなか終わることはない。
これにはサシャバル伯爵もお手上げ状態で「酒を持ってこい」と侍女に命令している。
それにはサシャバル伯爵夫人も声を荒げている。
他の侍女達も巻き込まれたくないのか大人しくしている。


「本当に腹立つわっ!あの女、アリーリエこそ寂れた辺境の地に行って呪われた醜い王子と結婚すればいいのよ!あの女を身代わりにしっ……」

「シャルル、落ち着いて。大丈夫だから!」

「……みが、わり」

「シャルル……?」

「サシャバル伯爵家の娘……娘ならいいのかしら?ウフフ…………それって」

「シャルル、大丈夫なの?しっかりして」


先程まであんなに騒いでシャルルがピタリと動きを止めて笑っている。
小さな声で何かをブツブツと呟いているがシャルルの血走った赤い瞳の視線の先に、カトリーナがいることに気づいて眠気が冷めるのと同時に嫌な予感を感じていた。
母が死んだ時、サシャバル伯爵夫人の真っ赤な唇が弧を描いたのと同じようにシャルルの口角がキュッと上がる。
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