【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
「そしてカトリーナ、今まで辛い目にあったのだと報告を受けている。今、クラレンスの婚約を発表すれば彼らはまた頭を使いカトリーナを利用しようとするだろう」
「……っ」
「クラレンスはそれを避けたいそうだ。サシャバル伯爵家に恩恵を与えぬように。また罰を与える前に、カトリーナをサシャバル伯爵家の籍から抜く手続きを行わねばならぬ」
「…………!」
続いてクラレンスが口を開く。
「カトリーナが今まで受けてきた痛みを考えるだけで怒りで頭がおかしくなりそうだ。今後、関わらせたくない。このままだと後々、しがみついてきそうで厄介だからな」
「……はい」
そしてクラレンスは今からサシャバル伯爵邸に向かい、伯爵と話してカトリーナの籍を抜くように進言するそうだ。
カトリーナはクラレンスが伯爵邸に向かうと聞いて心臓がドキリと跳ねた。
クラレンスはカトリーナを安心させるように手を取ると、反対側の手で優しくカトリーナの頬を撫でる。
「大丈夫だ。カトリーナは安全な場所で待っていてくれ」
「……クラレンス殿下」
「二度とカトリーナに辛い思いはさせない」
カトリーナはクラレンスの力強い言葉に頷くことしかできなかった。
しかしシャルルやサシャバル伯爵夫人の顔を思い出して、大きな不安が過ぎる。
(このまま、何もありませんように……)
カトリーナは祈るような思いでクラレンスとトーマスを見送った。