【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
シャルルは座り、侍女が気に入らないことをするたびに引っ叩きながらも準備を済ませた。
「次から覚えておきなさい……!」
以前ならばカトリーナを含めてシャルルの準備はあっという間に終わったのに、今日は使えない侍女が一人しかおらず倍以上の時間がかかってしまった。
シャルルがクラレンスが待っているサロンへと向かった。
笑顔の母が扉の前で待機している。
シャルルの身なりをチェックして「シャルル、美しいわ」と満足気に微笑んだ。
使えない侍女の話をすると、母は侍女を睨みつけながら「……きつい罰を与えないとね」と呟いた。
侍女はガクガクと震えていたが、あの様子だとすぐにやめてしまうため気遣う必要もないだろう。
扉を開くと城下町にいた時とは違い、全身真っ黒なローブに包まれているクラレンスが父と話している姿があった。
クラレンスはテーブルいっぱいに資料を広げて指さしている。
父は何故か震えているように見える。
部屋に入ると肌を刺すようなひんやりとした冷たい空気に身震いした。