【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
以前はクラレンスの隣にはカトリーナがいたが、今日はいない。
そもそも奴隷のように育ってきたカトリーナとクラレンスがともにいること自体がおかしいのだ。
シャルルは今日は着飾って、あの店にいる時よりもずっとずっと美しい。
自信満々なシャルルはドレスの裾を掴んで挨拶をする。
「ごきげんよう、クラレンス殿下」
「…………」
クレランスはシャルルに視線を送ることなく、こちらの存在を無視して父と話している。
無愛想なクレランスにめげることなく、シャルルは笑顔のまま椅子に腰掛ける。
「今日はどのような用件でしょうか?」
「……サシャバル伯爵に話はしてある。そろそろ失礼する」
「待ってくださいませ、クレランス殿下……!わたくしと少し話をしませんか?」
スッと空気が寒くなったような気がしたが、シャルルはそれに気づくことはない。
シャルルが手を伸ばして腕を掴もうとすると、これ以上近づけないようにかクラレンスが手を前に出す。
店で手を凍らされた痛みを思い出してシャルルは無意識に腕を引いた。