【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
明らかに苛立っているクラレンスは頭を下げ続けるカトリーナの腕を引き上げて無理矢理立たせると、ニナが持ってきた布を広げるとカトリーナの濡れた髪を触いている。
優しく髪を拭ってくれる大きな手。
自分のことは全て自分でしていたカトリーナにとっては初めての経験だった。


「ナルスティナ領にそのような格好で来てどういうつもりだ?死にたいのか」

「……申し訳、ありません」

「謝ってばかりだな。しおらしい態度をとって同情を引こうとしても無駄だぞ」

「…………はい」


ゴーンもニナも室内にも関わらず、とても温かそうな格好をしているのに、カトリーナは草色のペラペラと薄いワンピース一枚だけだった。
防寒用にカトリーナが持っていこうとした布も取り上げられてしまった。
恐らく嫌がらせのためにカトリーナにこの格好で行かせたのだろう。

二人の発言からわかる通り、カトリーナはいてもいなくてもどうでもいい存在で、本当に自分が必要とされていないのだと思い知らされる。
その後に「……代わりの服を用意しろ」と言ったクラレンスはそのまま部屋から出て行ってしまった。
ゴーンはこちらを心配そうに見ながらもクラレンスの後を追いかけていく。

ニナは慌てて服を取りに向かった。
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