【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
使用人として育ってきたカトリーナには簡単なことだが、シャルルにとってはそうはいかないだろう。
けれどカトリーナはここに行儀見習いとしてやってきたのだ。
ならば少しでも役に立って捨てられないように、追い出されないようにしなければならない。
カトリーナは手早く着替え終わると慣れた様子で濡れた衣服を畳んだ。
「本日よりお世話になります。色々と邸を案内していただけると働きやすいのですが」
「えっ……あ、そうですね」
ニナに屋敷を案内してもらいながら内容を確認しようとした時だった。
視界がくらりと歪んで、足に力が抜けてしまいカトリーナはその場に座り込んだ。
「大丈夫ですか!?」
「……っ、はい」
カトリーナが頷くものの、立ち上がれずに困惑していた。
足先がジンジンと痛んでいたが、もう感覚はなくなっている。
指先は氷のように冷たくて、体は燃えるように熱いと感じた。
寒いような熱いような感覚にカトリーナは耐えつつも壁を伝って起き上がる。
なんとか足に力を入れて踏ん張ろうとするものの、次第に視界が歪んでいき意識が徐々に遠くなっていく。
(このくらい、大丈夫……なんてことない。仕事をしなければ、生きていけない)