【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
涙でぐにゃりと歪んだ視界を向けると、そこにはニナの姿があった。
ニナが心配そうにカトリーナを見ている。
カトリーナは反射的に首を横に振っていた。


「着替えた後に倒れてしまったのですよ?覚えてますか?」

「……っ、ごほ」


御礼を言わなければと思ったが声を出そうとすると咳き込んでしまう。
埃っぽい屋根裏で暮らしていたせいか、カトリーナは体調を崩した時や掃除の時などにはよく咳がでていた。

『静かにしなさい』

母やサシャバル伯爵夫人の声が重なって聞こえた。
カトリーナは震える手で反射的に口元を押さえて音が出ないように咳き込むようにする。
指の感覚がないことにも気づかずにカトリーナは謝罪するために口を開く。


「ご迷惑を……申し訳、ござっ……ゴホッ、ゴホ!」

「無理をなさらないでください」

「ごめん、な……さっ」

「謝らないでください。ゆっくりでいいですから、お水を飲んでください」
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