【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
パシンと、また反対の頬に痛みが走る。
貴婦人の声はどんどんと低く恐ろしくなり、それと共に痛みもひどくなった。
何度も母に助けを求めたけれど……母は私が見えていないとでもいうように顔を背けている。
永遠のような長い時間の中、顔をしつこく叩かれていた。
顔はパンパンに腫れていたように思う。上下する肩と荒い息が聞こえた。


「……明日から、この子をお前と同じように働かせなさいっ!」


そう吐き捨てて貴婦人は去って行ってしまう。
その日、カトリーナは生まれて初めて感じる恐怖と痛みで体が震えて眠れなかった。
大好きな本が読めないのは初めてだった。
心細さから母に助けを求めるように手を伸ばしたが、すぐに腕を引く。
母はカトリーナに背を向けて何も言わなかった。 

その次の日、カトリーナは初めて屋根裏部屋の足を踏み出した。
髪も切らずにろくに体も洗っていないカトリーナは汚れていたらしく、体を洗い身なりは整えてから真新しい服に着替えた。
嬉しかったのは最初だけ。さっぱりした体ですぐに仕事をはじめるように言われた。
押しつけられる仕事は皆が嫌がる仕事ばかりで、何故か他に働いている人からも距離を置かれている。
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