【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
あの貴婦人はサシャバル伯爵夫人といい、この邸でとてもえらいそうで誰も逆らうことができない。
サシャバル伯爵夫人の暴言は毎日、カトリーナを蝕んでいくように耳に残る。

母の真似をして、カトリーナは必死に仕事を覚えていた。
カトリーナが動けば母の負担が減ると思ったからだ。
少しでも母に楽をさせてあげられたら……でなければ母がいなくなってしまうのではないか、カトリーナは本能的にそう感じていた。

しかし母はカトリーナがそうすることを望んではいなかったようで、屋根裏部屋に帰れば「あなたは余計なことをしないで」と怒られてしまう。
最初はカトリーナのために心配してくれているのだと思ったが「こんな家の奴らのために一生懸命働かなくていい!」そう怒鳴った母はカトリーナのためではなく恨みから出た言葉だと気づいて、心は空虚になっていく。

食事もろくに取らずにカトリーナよりも長く働く母を見ていた。
言いつけを守り、余計なことをしないようにした。
そこでカトリーナは生まれて初めて母に「無理をしないで」と意見しようとするが開きかけた口を閉じる。
今までに感じたことのない不安がカトリーナを襲う。
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