【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
クラレンスがカトリーナを呼ぶと、すぐにこちらにやってきて頭を下げた。
はじめて会った時よりもずっと顔色がよくなってはいるが、まだまだ心配だ。
「また働いていたのか。俺がいない時はニナの言うことに従えと言っているだろう」
「申し訳ございません」
「息をするように謝るな」
「申し訳、あっ……」
「悪いことをしているわけではないのだから謝る必要はない」
「…………はい」
「それから暫くは体調を戻すことに専念しろ」
「ですが、私は皆様の役に立ちたいのです。でなければ申し訳なくて……」
「必要ない。ここでの環境は王都よりも過酷だ。肉をつけなければ働く前に凍え死ぬ。今は大人しく飯を食って寝ること。それが今のお前の仕事だ。わかったか?」
カトリーナとクラレンスの会話を聞いていたニナが声を上げる。
「クラレンス殿下、そんな言い方あんまりです!」
「カトリーナに回りくどい言い方は伝わらないだろう?」
クレランスがカトリーナと接してわかったことはいくつかあるが、その一つが自分の普通がカトリーナの普通とかけ離れているということだ。
普段ならば黒いローブを被っていることに多少なりとも動じたり不思議に思ったりするが、そんな素振りは一切ない。
世間知らずなだけなのか、恐怖心がないのかはわからない。