【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
そしてサシャバル伯爵夫人はシャルルと共に執拗にカトリーナを虐げていたらしい。
カトリーナの母親は幼いカトリーナを残して目の前で病で息絶え、葬式にも出ていないと書かれている。

(惨い……いくらなんでもこれは)

クラレンスは言葉を失っていた。
今までのカトリーナの言葉や態度、行動の理由がよくわかったような気がした。
こんな生活をして耐えられるはずがない。

ベル公爵の手紙からはサシャバル伯爵邸で働いていた古株の元侍女の話で確かな情報だと書いてある。
サシャバル伯爵邸で働いていた侍女はカトリーナのことを聞くと眉を顰めてこう言ったそうだ。
『可哀想な子』
それほどにカトリーナはひどい目にあっていたのだろう。

グシャリと紙が潰れる音がした。
それから部屋いっぱいが冷気に満たされて凍っていく。
クラレンスはその強すぎる力ゆえに、感情が荒だった時に周囲に影響をもたらしてしまう。

ローブを被り、感情を制御できるようにしてきたつもりだった。
しかしこんな風に己の力がコントロールできなくなるのはいつぶりだろうか。
久しぶりに感情が溢れ出す感覚に己の手首に爪を立てながら怒りを抑えていた。
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