【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
そんな生活を続けていると、限界がきたのか母は起き上がれなくなるほどに体調を崩してしまう。
屋根裏部屋の前には親切な誰かから薬が届けられた。
置かれていた真新しい果物も、カトリーナが持ってきた食べ物も母は絶対に口にしなかった。

「あなたが食べなさい」

カトリーナは食い繋ぐことはできたけれど、母の容態は悪化するばかり。
カトリーナは毎晩、震えが止まらずに骨と皮になっていく手を握ることすらできないまま、息をしているかを確認していた。

そんな時、カトリーナに一筋の光が差し込んだ。
たまたま侍女達が話していることを聞いて、自分の父がサシャバル伯爵であることを知ったのだ。
カトリーナは縋るような思いでサシャバル伯爵の元を訪ねた。
「どうか母を助けてください」
そう訴えかけたとしても彼はカトリーナと目を合わせることなく、苦い表情をして顔を背けてしまう。
邸で働く人達に頼ろうとしても皆、同じ顔をする。

思えばサシャバル伯爵夫人が母を虐げようと、手を差し伸べることはなかった。
カトリーナはこの人に期待するだけ無駄なのだと気づいて、誰にも頼れないならばカトリーナがなんとかするしかないと思い、母のためにできることはなんだってやった。
どうにかして母を救いたいと何度も何度も神様に願った。
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