【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
カトリーナがしゅんとして反省した様子を見せると、クラレンスは溜息を吐きつつも、いつものようにカトリーナの頭を撫でた。


「必要以上に謝るな」


クラレンスの表情は相変わらず全身、黒いローブに囲まれてわからなかったが、怒っているような……そんな雰囲気を感じていた。


「ここではサシャバル伯爵邸でのことは忘れろ」


クラレンスにそう言われてカトリーナは目を見開いて思わず顔を上げる。


「それは……どういう意味でしょうか」

「ここはサシャバル伯爵邸ではない。あの邸でのルールは気にしなくていい。ここはここのやり方がある」

「やり方……?」

「そうだ」

「……はい、わかりました」


クラレンスのひんやりとした手のひらがカトリーナの頭をそっと撫でる。
カトリーナはクラレンスの指示を素直に聞いていたが、暇を持て余して体がムズムズとしてくる。
働きたいと頼むものの、クラレンスにもニナにもゴーンにもトーマスにも却下されてしまう。

カトリーナがいる部屋には一日に一度か二度、クラレンスが様子を見るために尋ねてきた。
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