【書籍化&コミカライズ】虐げられていた身代わり令嬢が呪われ王子に溶けるほどに愛されるまで
クラレンスはカトリーナに様々なものを与えてくれた。
いい匂いがするベッド、温かい食事、ゆっくりと眠れる場所。
それはカトリーナが今まで生きてきた中で得られなかったものばかり。
しかし今まで朝から晩まで働きっぱなしのカトリーナにとっては天国のような生活も何か悪いことの前触れのような気がしてならない。

クラレンスいわく「普通のことだぞ」と言っていたが、カトリーナにとっては全てが真新しく思えた。
ニナとゴーンも邸で働く他のの侍女達もカトリーナにとても親切にしてくれる。
トーマスはカトリーナを見て「雪うさぎみたいで可愛いなぁ」と言っていつも笑っている。
サシャバル伯爵家とは真逆な生活はソワソワするのと同時になんだか不思議な感覚だった。

そんなカトリーナの元に数冊の本が届けられる。
それは屋根裏部屋では見たことないほどに美しい本だった。
真っ白な紙に書かれている文字やツルツルとした発色のいい背表紙を何度も撫でていた。

(紙が真っ白で、酸っぱい匂いもしない……)

中身を読まずに新しい本を撫でては喜んだあとに、やっと中身を読み始める。
物語に熱中しているカトリーナを複雑な表情で見つめていたクラレンス達に気づくことはなかった。
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