【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
「そんなに遠慮しなくたって、望むならわたしの時間をお好きなだけあなたに差し上げるわ。婚約者でしょう?」
ただし、まとわりついてくる取り巻きたちをうまくかわせるなら、という条件付きだ。
クラウスは嬉しそうに口角を上げて、「そうだな」と答えた。
繋いだ手から温もりが伝わってきてどきどきしてしまう。今、クラウスが抱いてくれている好意は全部、魅了魔法で強制されているものだ。頭では理解していても、舞い上がっている自分がいた。
(魅了魔法のこと、洗いざらい全部打ち明けられたら……楽になれるのに)
移りゆく窓の外の景色を眺めながら、そんな風に思った。
エルヴィアナはクラウスに、魅了魔法の呪いのことを話していない。彼だけではなく、親しい友人にさえ話していない。知っているのは家族と侍女のリジーだけ。
『悪女』と嫌われまくっても言い逃れせず、魔法のことを黙っているのは――理由があった。
◇◇◇
屋敷に到着すると、門の奥に使用人たちが控えていて、いつものように盛大に出迎えられる。
「お帰りなさいませ。お嬢様」
クラウスにエスコートされながら馬車を下りると、使用人たちが驚きを顔に滲ませた。彼が家まで送ってくるのは数年ぶり。驚くのも無理ないだろう。
「見送ってくださってありがとう。私はこれで……」
繋いでいた手を解こうとするが、なぜだか一向に離してくれない。
(ちょ、ちょっと何!?)
力を入れて身じろぐ。