【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜


「俺たちにとったレディの傍らにいる以上に有意義な時間はございません!」
「…………」

 いつものように取り巻きに手を焼いていたそのとき――。

「エリィ。次の授業は東講堂だろう。一緒に行こう」

 柔らかい笑顔で声をかけてきたのはクラウスだった。次の授業は彼のクラスと合同授業。たかが移動教室に一緒に行くために、違うクラスからわざわざ訪ねてくるとは。「では僕らも一緒に」と言い出す取り巻きたち。すると、クラウスから笑顔がすっと消えて、冷たい表情で言った。

「彼女は俺の婚約者だ。二人の時間に首を突っ込むのは野暮ではないか」
「うっ……それは……」

 威圧的な視線に、いつも執拗な取り巻きたちが珍しく引き下がる。

(わたしの言うことは聞かないくせに、クラウス様なら従うのね)

 取り巻きたちは魅了魔法で我を忘れてしまっているが、クラウスの言葉なら理性を取り戻すらしい。ここのところ、彼が頻繁にエルヴィアナの元に通うようになり、取り巻きに付きまとわれる時間がぐっと減った。昔は取り巻きが一緒にいるとき、クラウスは嫌悪感を滲ませるだけで話しかけてくることなどなかったのだが。

 移動中、彼は「君に重いものを持たせられない」と言って、たった二冊の教本を代わりに持ってくれた。

「怒っているか」
「どうして?」
「最近、俺ばかりが君のことを独り占めしている。その……他の男たちと過ごす時間を邪魔しているだろう」
「…………」

 おかしなことを謝られてしまった。浮気相手との時間を奪って謝罪してくる人は、クラウスを除いてそうそういないだろう。

 魅了魔法に当てられた男たちに囲われるようになってから、いたたまれなくてクラウスのことを避けてきた。本当はクラウスと過ごしたいと思っていたけれど、それを言う訳にはいかない。不本意で他の男と過ごしていたことを言ってしまえば、魅了魔法の呪いに勘づくきっかけになってしまうかもしれないから。だから、何食わぬ顔で過ごすことを徹底してきたのだった。
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