【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
まるで、ごきげんようと挨拶すると同じくらい軽い感覚で、とんでもないことを告げられてしまった。関係が拗れてしまうかもしれないのに、わざわざ悪口を言われた本人に告げ口するのは無粋ではないか。
上目遣いでこちらを見上げるルーシェル。どんな反応を取るのか窺われているみたいだ。善意のつもりなのか、その表情からは悪意を全く感じなくて逆に怖い。
「……それは、わたしが一番よく知っています」
一番彼の傍にいたのはエルヴィアナだ。彼の心変わりに気づかないはずがない。
表情を変えずに冷静に答えると、ルーシェルはちょっとだけつまらなそうに肩を落とした。
(言われなくたって、分かってる)
クラウスに嫌われるのは当然だ。よく分かっている。なぜなら――。
「クラウス様がお可哀想ですわ。『悪女』として有名なエルヴィアナさんの婚約者だなんて。それだけで名誉に傷がついてしまいますもの」
「…………」
しおらしげにそう言ったルーシェルは、エルヴィアナの背後に視線を向けた。
「相変わらず節操がないですわね。……このような公衆の面前で」
それは、軽蔑するような眼差しで。
エルヴィアナの後ろには、複数人の美男子がべったりくっついていた。彼らは皆、エルヴィアナに心酔する取り巻き令息だ。
一人は扇子を仰いで冷風をそそぎ、一人はいつでも喉を潤せるように飲み物のグラスを持っている。貴族の令息たちが、さながら執事のように至れり尽くせりだ。
やめてほしいと言うと揃いも揃って命を絶とうとするので、彼らの奉仕を拒めないのだ。