【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜

 二人でベンチに座り、事の顛末を打ち明けた。家族とリジー以外には初めて話す。13歳の狩猟祭から今に至るまでを、包み隠さず全て伝えた。

「――つまり、その魔獣を見つけて退治すれば、クラウス様の魅了も解けるということ?」
「はい」

 そうしたら、彼はルーシェルに惚れている心を取り戻すことになるだろう。エルヴィアナの元を離れて、彼女の元に行くのだ。

「まさか、あなたが悪女と言われてきた背後にそのような事情があったとは思いませんでしたわ。苦労されてきたのね」
「……ええ」
「ご自分の名誉を傷つけてまでクラウス様を気遣うだなんて……。そんなにあのお方のことを想っておいででしたの」

 こくんと頷けば、彼女は呆れたように「不器用な人ですね」と漏らした。もっと違うやり方はあったのかもしれない。けれど、エルヴィアナはクラウスを守るために沈黙する道を選ぶことしかできなかった。

「協力いたしますよ。その魔獣の捜索」
「本当ですか?」
「二言はありません。王城の裏の森なら、城の者に指示しておきましょう。もちろん、呪いの件は口外しないとお約束しますわ」

 すっとベンチから立ち上がるルーシェル。

「ありがとうございま、」
「――でも。もし魔獣が見つからなければ、あなたは死にますのよね? そう遠くないうちに」

 感情の読めない表情を見たとき、背筋がゾクッとした。そこはかとなく狂気を感じてしまって。恐る恐る頷くと、彼女はにこりと天使の笑顔を浮かべながら、「そうならないように一緒に頑張りましょう」と優しく言い残して、踵を返した。

 背を向けたルーシェルが、意地の悪い笑顔を浮かべているのを、エルヴィアナは知らない。



 ◇◇◇


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