【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
しつこく話し続けてみて分かったのは、彼はエルヴィアナとの思い出を語るときだけは、笑顔になるということだけだ。よっぽど好きだったのだろう。
「もうすぐ狩猟祭ですね。何か狩猟祭にまつわる思い出などはありますか?」
「……昔、エルヴィアナがくれたお守りを今も大切にしている」
いつも仏頂面なのに、とても柔らかい表情をするクラウス。
(……また、エルヴィアナさんのお話)
それが気に入らなくて、エルヴィアナに「クラウス様、あなたのことがお嫌いなんですって」などという嘘を吹き込み、別れるようそそのかした。エルヴィアナは大勢の男と浮気しているくせにひどく悲しそうな顔をして、明らかに不本意そうに承諾した。
でも、エルヴィアナの一連の行動が呪いのせいだとしたら腑に落ちる。
「最後にクラウス様を手に入れるのは、このわたし」
ほくそ笑みながら呟けば、ニーニャが不思議そうに小首を傾げた。
エルヴィアナは呪いが解けなければ、生命力が吸い取られて死ぬ。そうしたら、婚約者を喪失したクラウスの弱い心に付け込み、慰めてあげるのだ。きっとそのときは、ルーシェルのことが好きになるだろう。
クラウスを初めて見たのは王立学園の入学式だった。その瞬間、恋に落ちた。氷のように冷たい美貌に、一瞬で心を鷲掴みにされた。
美しいものは好きだ。王女として蝶よ花よちやほやされ、ほしいものはなんだって手に入れてきた。だから今度も必ず手に入れてみせる。ルーシェルに手に入らないものなんて――この世界には存在しないのだ。