【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
「……ごめんね」
ぼそっと呟いた声は、街の喧騒に掻き消されてリジーの耳には届かなかった。
街道を歩いてしばらく。突然リジーが立ち止まった。そして彼女の視線の先に――よく見慣れた人物が。
思わず顔をしかめて、一歩後ろに後退する。しかし彼は、自分が迷惑そうな顔を向けられていることを少しも意に返さず、こっちに近づいて来た。
「奇遇だな」
「どうしてこんなところに? クラウス様」
「ここに来たらエリィに会えるような気がした」
「奇妙ね」
エルヴィアナが滅多に外出しないということは、クラウスも知っている。それなのに、ピンポイントで場所を特定して待ち伏せていたということは――共犯者がいる。
後ろに控えているリジーを振り返れば、彼女はクラウスと親指をぐっと立て合い、してやったぞという顔をしていた。
(やられた……)
街の脇に立ち並ぶ店には目もくれず、どこに向かうのだろうと思っていたが、クラウスのことを探していたのだ。