【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
ホームレスの男性と別れたあと、クラウスの顔色を窺う。けれど彼は何も言わなかった。
更に次に、困っている子どもを見つけて声をかけるエルヴィアナ。母親も一緒にいる。
「どうかしたの?」
「帽子が木に引っかかっちゃって……」
頭上を見上げれば、木の枝の高いところに帽子が。エルヴィアナは背が高い方だが、手を伸ばしても届きそうにない。
(ジャンプしたらいけそう)
「僕、ちょっとそこから離れていて」
「わ、分かった」
エルヴィアナは気から少し離れ、助走をつけてジャンプした。太い幹に片手を置いて、見事に帽子の鍔を掴み着地する。そっと少年の頭に帽子を被せてやると、彼は照れたように頬を染めた。
「あ、ありがとう……。かっこいいお姉ちゃん」
「どういたしまして」
少年は、恥ずかしがって体をくねらせ、母親の背中に隠れてしまった。その様子が微笑ましくてエルヴィアナも頬を緩めた。一方、母親の方はクラウスにうっとり。
「ご親切にどうも……! この後何かお礼を……!」
なぜか帽子を取った本人ではなく、クラウスにばかり頭を下げている。下心が見え透いている。
「いえ、帽子を取ったのは彼女ですから」