【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
◇◇◇
クラウスにエスコートされて、再び広間に戻った。しばらく休憩を取ってきたが、嫉妬したクラウスのせいで、ちっとも休まらず、むしろさっきより色んな意味で疲弊している。
「今日もとても綺麗だ」
「……見ているのは、クラウス様の方よ」
エルヴィアナは鋭い目付きをしている上、人を寄せつけない威圧的な雰囲気があるので、魅力的といえる女性像にはあまり当てはまらない。この国で理想とされるのは、くりっとした瞳に庇護欲を掻き立てられるような可愛い女性だから。
一方。礼服姿のクラウスは、まるで物語から飛び出してきた王子様のよう。女性たちが彼のことをうっとりと盗み見ている。
しかし、人気を集めているといえば、もう一人。第七王子ルイスも、クラウスと同じように女性たちの目を引いていた。クラウスは硬派な美形だが、ルイスは柔らかい雰囲気で、人好きのしそうな美形だ。そして、適齢期でありながら未婚というのも人気の理由。女性たちは我こそが見初められようと躍起になる。けれど彼は――リジーのことを慕っている。
リジーに会うために度々ブランツェ公爵邸に通ってくる彼。軽薄そうに見えて、一途でマメだ。
「こんばんは。エルヴィアナ嬢にクラウス」
彼はこちらに来て、紳士的に一礼した。そして彼の隣には――ルーシェルが。
「ごきげんよう、クラウス様」
彼女はエルヴィアナには目も向けず、クラウスだけを見つめている。分かりやすい人だ。
相変わらず、ルイスの周りには鬱陶しいくらいのキラキラしたオーラが漂っていて、目を眇めてしまう。ルイスはクラウスの方を一瞥して、意味ありげに口角を上げる。クラウスも、元々鋭い目付きを険しくさせていて。謎のアイコンタクトに、エルヴィアナは首を傾げる。
そういえばこの狩猟祭の間、やたらと二人はこそこそ話していたが、何を話していたのだろう。
「エルヴィアナ嬢は相変わらず女性に人気だね。黒の長髪の美男子は誰だって何度も尋ねられたよ。僕よりモテるんじゃない?」
「ご冗談を」
クラウスが不服そうに「エリィは俺にだけモテれば十分だ」と呟いた。一方、ルーシェルはふふと優美に微笑みながら言った。