【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
「本当。エルヴィアナさんは凛々しく逞しくて……羨ましいです。わたくしも格好いい女性になりたいのですが、小柄で童顔のせいで、可愛いと言われるばかりですので」
もう一度言うが、この国の女性の理想像は、格好いい女性ではなく、彼女のように華奢で可愛らしい女性だ。少しも羨ましいなんて思っていないだろうことは見え透いている。これは遠回しに見下すような発言だ。
「恐れながら王女様は、今のままでとても魅力的に見えます」
「ほ、本当ですか? そんなことありませんわ」
ルーシェルは謙遜しつつも満更でもなさそうな様子で、クラウスの方をちらちらと見上げていた。けれどクラウスから気の利いた言葉は何もない。
「でも――エルヴィアナさんも素敵ですよ。女性でなく男性である方が似合うくらいに。ね? クラウス様」
そう来たか。ルーシェルは、エルヴィアナに女性らしい魅力がないことをほのめかしているのだ。
「……俺は」
それまで沈黙していたクラウスがおもむろに口を開いた。
「俺はエルヴィアナが男になっても好きになるが、彼女は俺を選んでくれるだろうか」
顎に手を添えて真剣に考え始める彼。
(違う。そういう話じゃない)
シーン……。ルーシェルは若干引いた様子で目を細めている。この国の宗教では、同性愛は禁忌とされているのだ。軽々しく口にすることも咎められている。
「はは……クラウス様ったら冗談がお上手ですね。お二人が仲良しなのはよく分かりました」
すると今度は、ルイスがエルヴィアナとクラウスを交互に眺めて、掴みどころのない笑みを浮かべた。
「二人、仲直りしたんだね? 犬猿の仲って感じだったのに」
「……おかげさまで」
ルイスは長らく、エルヴィアナとクラウスの不仲を心配していた。仲直りするまで紆余曲折あったのだが、クラウスに魅了魔法をかけてしまっているとは口が裂けても言えない。当たり障りのない返事で濁してみれば、今度はクラウスのことを睨みつける彼。それはいつもの人好きのする笑顔ではなく、不穏な気配がする。
(……ルイス様?)
クラウスも険しい顔でルイスを見据えていて、一触即発の雰囲気だ。