【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
「違うわっ、ニーニャが魔獣だったなんて、最近まで知りませんでしたの。これは本当よ……っ」
「肝心なのは魔獣を飼っていたという事実だけさ。それに……王家の分家であるルーズヴァイン公爵家次期当主の想い人を貶め、あまつさえ婚約者の座を奪おうとしたことは、どう言い訳するつもりだい? 王女であっても許されることではないよ。お前のことは国王陛下に報告する」
ルーシェルは拳をぎゅっと握り締め、悔しそうに唇を引き結んだ。けれど直後、何かいたずらを思いついたように口角を上げた。
「いいのですか? わたくしから魔獣を取り上げたら……エルヴィアナさんは決して手に入らなくなりますよ?」
「そうだとして、僕に困ることは何もないね。彼女が大事な人と結ばれるなら、それが何よりだ」
「!」
そもそもルイスが好きなのはリジーだ。けれど、ルーシェルは、ルイスが魅了魔法に当てられていると勘違いしている。
「どうして……エルヴィアナさんのことが好きなんでしょう?」
「ああ、大好きだよ。……友人としてね」
「! お兄様、まさか……」
ルイスはふふ、と軽薄そうに笑った。
「残念。僕は魅了魔法にはかかっていないよ。主演男優賞ものの名演技だっただろう? おかげで妹の醜態が見られたよ。最悪の気分だ」
これには、ルーシェルもあんぐり。ルイスはルーシェルの飾り紐を本人に返し、別の飾り紐を剣の柄に結び直した。
「……僕にも想い人がいるんでね」
剣の柄に揺れたのは、エルヴィアナがリジーにあげた材料で作られた飾り紐。