【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
(わたし……三日間もお風呂に入ってない……!?)
横になっていたせいで髪は乱れているし、肌も荒れている。顔も浮腫んでいる。最悪のコンディションだ。それに、もしかしたら臭うのでは。慌てて両手を前に突き出して、叫んだ。
「待って!」
「……どうした?」
ぴたりと立ち止まって首を傾げる彼。
「わたし、お風呂とか入ってなくて……汚い……」
「…………」
それを聞いて、彼ははぁと大きくため息を漏らした。エルヴィアナの制止も聞かず、こっちにやって来てベッドの脇に腰を下ろして、抱き締めてきた。
「やだっ、離しなさいよ馬鹿っ!」
彼の腕の中で身動ぎしていると、耳元でこう囁かれる。
「エリィは綺麗だ。大好きだ」
「…………」
抵抗していた力が抜けてしまった。どうせ、この人には敵わないから、観念するしかないと。
彼の腕に抱かれながら、胸元に頬をわずかに擦り寄せた。触れているだけで安心する。不安や恐怖も溶けてなくなるような感じ。
彼はそっと離れ、椅子を他所から引っ張ってきて寝台の近くに座り直し、「体調はどうか」と聞いてきた。本当はだるくて気分が悪いが。心配をかけたくなかったので、大丈夫だと嘘をついた。しかし――。
「嘘はつくな」
「え……」
「心配をかけたくなくて嘘をついただろう」
まさか彼に見抜かれてしまうとは。クラウスは人の感情の機微に疎く、今まではエルヴィアナの嘘に気づくことなんてなかったのに。
「どうして分かったのかって顔をしているな。……分かるさ。ここ最近はずっと君と過ごしていたからな」