【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
確かに、魅了魔法をクラウスにかけてから、ずっと一緒にいる気がする。傍で過ごしていれば、僅かな変化にも聡くなるものなのかもしれない。
「ゆっくり休め。何かあれば人を呼ぶといい」
気を利かせて部屋を出て行こうとする彼を、咄嗟に引き留める。服を掴まれたクラウスが、驚いてこちらを振り返る。
「行かないで」
「……エリィ?」
「……もう少しだけ、傍にいてって言ってるの」
最後の方はほとんど消え入りそうな声だった。勇気を振り絞って伝えてみれば、彼は愛おしいものを見るように目を細めた。
「君が望むなら、いつまででも」
クラウスはくすと笑い、「エリィ」と呟いた。名前を呼ぶ甘い声が鼓膜を揺らし、胸が高鳴った。
それからクラウスと、取るに足らない話しをした。今までは一緒に話すような機会が少なかったが、離れていた時間を埋め合うように、最近は沢山言葉を交わすようになった。クラウスは生真面目で堅い人なので、特別話が面白い訳ではない。でも、ただ傍にいてくれるだけで不思議と安らぐのだ。
「わたしね、クラウス様と一緒にいると、とても安心する。凄く幸せな気分になる」
「……」
彼は口元を手で覆いながら、頬を赤くして目を逸らした。
「どうしたの?」
「今日はやけに素直だな。急に素直になられると、反応に困る。あまりに可愛すぎて」
「わたしはいつだって素直よ」
「嘘をつくな」
「嘘じゃないもの」
呆れたようにため息を吐きながら俯いたクラウス。その彼のつむじを、つんと指で押した。
「おい、何して……」
つむじを押されて顔が上げられなくなっている。エルヴィアナは彼の頭上から話しかけた。