【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
するとそのとき。
『ヴヴヴォオオオオオオオ……!』
「きゃああっ……!」
「王女様!?」
突然、ルーシェルよりひと回りもふた回りもおおきな獣が襲いかかってきた。白くふさふさの毛に、青と黄色のオッドアイ。黒い尻尾……。その特徴はニーニャと一致しているが、ルーシェルが知っているニーニャではなかった。
牙で鉄格子を噛んだせいで口内を切ったらしく、血が滴っている。ルーシェルはそこではっとした。
(エルヴィアナさんの生命力を吸収して本来の姿を取り戻した……?)
もしかしたらこの猛々しい姿が、ニーニャ本来の姿なのかもしれない。瞳を炯々と光らせ、牙を剥き出しにしている魔獣。鋭い爪が伸びた手が、ルーシェルの肩を掴む。
(痛い……っ)
ニーニャにのしかかられて身動きが取れない。
「そんなところでぼさっとしていないで、早く助けを呼んで来なさいよ!」
「ひっ……」
セレナに命じるが、彼女はあまりの恐怖で身体が強ばってしまい、一歩も動けなくなっている。護衛は少数しか連れてきていないし、城の外に待機させてしまった。
「ああっ……!」
次の瞬間。ルーシェルの肩に今まで感じたことのない激痛が走る。ニーニャは長い爪でルーシェルを引っ掻き、そのまま逃走した。
「王女様……! 大丈夫ですか!? しっかりなさってください、王女様……!」
セレナの声を遠くに聞きながら、意識を手放した。