【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
03_魅了魔法って恐ろしい
パーティーの帰り、クラウスが家まで送ってくれることになった。見送りは不要だと断っても彼は頑なで、折れるしかなかったのだ。手を引かれたまま、庭園から停車場まで歩く。
手を繋ぐのはいつぶりのことだろう。魅了魔法の呪いにかかってしまってから、ずっと彼のことを避けてきたので、こういったスキンシップは久し振りのことだ。
(クラウス様の手……大きい)
昔は同じくらいの大きさだったのに、今はひと回りもふた周りも大きくて、エルヴィアナの細い手がすっぽりと収まってしまう。節があるたくましい手に包まれると、守られているような安心感がある。
「エリィの手は小さいな。柔らかくて……溶けてなくなりそうだ」
「そんな訳ないでしょう」
エルヴィアナと手を繋いで感動しているクラウス。というか、さりげなく『エリィ』呼びしている。そんな愛称で呼ばれたのは初めてだ。
彼は紳士的にエスコートしつつ、歩調もこちらに合わせてくれていた。庭園の景色を楽しみながら、ゆったりと歩く。
「そこ、足元に気をつけろ」
「……ありがとう」
手で支えられながら、馬車に乗り込む。そこで彼は向かいではなく隣に座ってきた。そして、おもむろに手を伸ばして、膝の上のエルヴィアナの手に、自身の手を重ねる。
「あの……この手は」
「少しでも君に触れていたくて。そうでないと切なくて死んでしまう」
「うさぎみたいなメンタルね」
うさぎなどの小動物は寂しいとすぐに精神をやられて死んでしまう、なんて言ったりする。隣にいる体躯のいい青年が、さながら小動物のように思えた。
「俺が触れるのは――嫌か?」
「…………」
手を握ったままのクラウスが尋ねる。