【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
22_手作りの魔法の甘いひととき
馬車に揺られてしばらく。到着したのは郊外の小さな街。陽射しが眩しくて、爽やかな風が肌を撫でる。
エルヴィアナとクラウスは、穏やかな街をのんびり歩いた。
彼に先導され、辿り着いたのは背の高い針葉樹が立ち並ぶ森。山の麓ふもとに護衛の者を待機させる。穏やかな丘を進んだ先――あまりの美しい光景に息を飲んだ。
木が生えていない開けた空間に、ポピーの花が一面に咲き誇っている。見渡す限り、赤やオレンジ、黄色の色調豊かな花畑が広がっている。それはまるで、絨毯のようだ。
「…………綺麗」
エルヴィアナは思わず、感嘆の息を漏らした。
すると、クラウスが少し屈みながらこちらに片手を差し出してきた。彼がエスコートしようとしているのだと理解し、手をその上に重ねる。できるだけ花を踏まないように細心の注意を払いながら花畑の中を進み、花が生えていない木の根元にレジャーシートを敷いて腰を下ろした。
「気に入ってくれたか?」
「ええ。とても」
花を摘み、慣れた手つきで茎を編み始める。出来上がった花冠をクラウスの頭に被せると、彼は少しだけ困惑したように眉を下げた。
「よく似合うわ」
「……そうか?」
作ってきたお弁当を食べながら、おしゃべりをして。普段より時間の流れがゆったりしているような気がする。