【コミカライズ】王女様がお好きなら、邪魔者のわたしは要らないですか? 〜破局寸前で魅了魔法をかけてしまい、わたしのことが嫌いなはずの婚約者が溺愛してくる〜
「あっいや、すまない。急に妙なことを――」
気のない政略結婚の相手に、突然好きだと言われても迷惑だろう。引かれたに違いない。そう思って彼女の方を見れば、熟れたりんごのように顔を真っ赤に染めていて。いつも冷静沈着で強気な彼女が恥じらって目を泳がせる姿に、またしても胸が鷲掴みにされる。
(エルヴィアナはこんなに可愛らしい人だったのか)
クラウスが知っているのは、毅然としていて凛としていて、クールな姿だ。
「急にそんなこと言われたら、恥ずかしい……」
彼女は眉を寄せて、照れながらごにょごにょと呟いた。
「わ、わたしも別に、嫌いじゃ……ないわ」
クラウスは心の中で、これが俗に言う『ツンデレ萌え』だと理解した。
おもむろに、足元に生えているオレンジのポピーを摘み取って、エルヴィアナの左手の薬指に結んだ。彼女はそれを見ながら言った。彼女に愛情を何かの形で示したかったのだ。
「クラウス様は知ってる? 異国ではね、婚約や結婚のときに、男の人が好きな人に指輪を贈る文化があるんですって。……凄く素敵」
「なら、いつか俺たちがそういう関係になったら、改めて君に指輪を贈ろう」
「ふふ、待ってる」
「君に大好きになってもらえるよう、努力する」
「……!」
エルヴィアナは小さめの声で「分かった」と言った。ポピーでできた仮の指輪を眺めながら、どこか嬉しそうに目を細めた彼女の横顔は、どんな花よりも可憐だと思った。
◇◇◇
エルヴィアナに呪いがかかってからのこと。13歳の狩猟祭をきっかけに、彼女は変わっていった。根は生真面目で、道理から外れたことも嫌いなはずなのに、美しい男をいつもはべらせるようになった。