交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
あんまり早く押しかけるのは迷惑だから、9時半までは耐えた。
小梅には連絡をせずに、小梅の母親にはこっそりメッセージを送っておく。
俺のことが嫌で実家に帰ったのなら、俺が来ると知ったら逃げられるかもしれないと思ったのだ。
このまま、小梅と話せないままなのは絶対に嫌だった。
「あ、一織くん。いらっしゃい。 小梅と喧嘩でもした? 」
「すみません、朝早くに押しかけてしまって」
小梅はこの母親にも似ている。迷惑がるでもなく、穏やかに笑って招き入れてくれた。
「よく分からないけど、とにかく上がって。小梅なら2階にいるわ。 何も無ければ死ぬまで一緒にいるんだもの、夫婦に喧嘩はつきものよ。喧嘩したって、仲直りすればいいんだから」
「ありがとうございます。お邪魔します」
自分の母はいつも忙しそうにしていたし、こうして笑いかけられたのも、落ち着いて話をしたのも最後がいつだったか思い出せない。
暖かいこの家庭でのびのびと育った小梅だから、俺は彼女に惹かれたのだ。