交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「一織さん、お仕事は…?」

「妻が家出したっていうのに、仕事どころじゃないだろ」

小梅の顔色がさあっと青くなるので、俺は付け加える。

「午後から行くよ。 でもその前に、小梅に話がある」

こくりと頷く小梅の表情は暗い。
促されて、白いふわふわのカーペットに腰を下ろす。クッションも渡されたので、それは抱き抱えるようにして持っておく。

「俺が悪かった。 小梅に、まだ話していないことがあるんだ。聞いてくれるか?」

蚊の鳴くような声で「はい」と頷いたのを見て、俺は話し始めた。
祖父と、小梅の祖母である桜子さんについての話だ。
俺にとって祖父がどれだけ大きな存在であり、結婚をしてまで祖父がもらった恩を返したかった理由を伝えるために、両親との関係についても触れた。
特別仲が悪いわけではないけれど、仲が良いとも言えない、と。
< 104 / 167 >

この作品をシェア

pagetop