交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~





「…本当は、時間をかけてじっくり攻めるつもりだったのにな」

「待てませんでした。私のためっていうのは分かってたけど」

素肌をぴったりと触れ合わせ、直接伝わる彼の体温が熱い。いや、熱いのは私もだ。

好きな人と結ばれた幸福とその余韻が残る薄暗い寝室。ぼんやりと視界に映った彼の鍛えられた体躯に迫られ、欲望に満ちた彼の瞳が私を射抜く度、胸が高鳴った。

「小梅は出会った頃から大胆だよな」

「一織さんは押しに弱いですよね」

くすくすと笑うと、ちらりと彼が私をのぞき込む。

「好きな女にあんなふうにあからさまに誘惑されて煽られて、堪えられる男がいたら会ってみたいよ」

「えへへ、ありがとうございます」

「褒めてない…」

仕方ないな、と笑いつつ、彼はキスをくれる。
おかえしに、頭だけ持ち上げて唇にそっと触れると、くるんと視界が一転した。

「なんだその戯れるみたいなキスは。 もっと気持ちよくて美味いの、教えてやっただろ」

「んっ、ふ…」

私にはまだハードルが高いです、一織さん。受け取るので精一杯なんですよ。だから代わりに、私の精一杯を伝える。

「大好き、一織さ…」

知ってる、と言わんばかりの強引で甘いキスは、お互いの存在を確かめ合うように降り注ぎ、夜は更けていった。



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