交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
「すみませんが、少し出てきます」

「一織、こんな時にまで仕事か?」

「あら、洋一さんもそうだったじゃありませんか」

不服そうにしたお義父様は、お義母様の一言でうっと口ごもる。

一織さんは私に目配せして、ごめんと言って部屋を出ていった。

もうすっかり緊張も解けたし、ご両親と3人の空間でも気詰まりはしない。
のんびりした両親の元でとにかくのびのびと育ったおかげか私のこの単純で楽観的な性格は、人付き合いにおいてよく役立つ。

というか、ここの料亭はお茶も一級品なのだそうで、深みがあってちょうど良い苦さが美味しい。さすがは深山グループ。改めて、そんな会社のスリートップの方たちと食事を囲んでいるなんて、すごい状況じゃない?

「小梅さん、あのね。折り入って頼みがあるのよ。 今日会ったばかりでこんなお願いをするのは図々しいと思うかもしれないのだけれど」

一織さんが席を外したタイミングで、お義母様が躊躇いがちに口を開く。
なんだろう、改まって。しかも私にだけ…?

「これからも、こんな風に四人で会う機会を作ってほしいの」

思ってもみなかったお願いに、少し驚いてしまった。
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