交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
大切な家族だから side 一織
11月も半ば、気温がぐっと下がり、冬の匂いがする。
「いってらっしゃい、一織さん!」
「行ってきます。 ほんとに大丈夫か?迷わず来れるか?」
「もう! 一度行ったことがあるので大丈夫ですってば〜! 一織さんは心配性なんだから」
玄関先で渋る俺に小梅が眉を下げて笑う。
「ほら! 早く行かないと遅刻しますよ」
ぐいぐいと背を押され、あっさり追い出されてしまった。
振り返ると、小梅が顔を覗かせて手を振っている。
なんて可愛いんだ。ああ、仕事に行きたくない。一日中あの妻を愛でていたい。
などと言ったら今度こそ怒られそうだから、舞い戻りたくなるのをグッと堪えて手を振り返し、出勤した。
今日は仕事が早く終われそうなので、小梅と会社で待ち合わせてディナーに行く予定だ。
やはり仕事に行くしかない。行かなければ終わらないのだ。仕事が長引いたとかで小梅を待たせるわけにはいかないだろう。