交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
プロポーズの策略 side 一織
「だから、考えてほしい。俺との結婚について」
言いながら、俺は自分の必死さに驚いていた。
だが俺はどうしても、古嵐小梅との関係を作りたかったのだ。
彼女は3日後に、返事をすると真剣な眼差しで俺に言った。
*
『古嵐家に何かあった時、助けになりなさい。それが私からおまえにやる最後の役目だ、一織』
そんな話を、祖父から何度聞かされたことだろう。
俺の祖父は、深山グループがまだほんの小さな商店だった大正時代に始まって以来の剛腕を持った社長だった。
両親はその子会社の社長と副社長を担っており、ほぼ会社に行ったっきりで家にはほとんど帰らない人たちだった。
寝る時はひとり、朝起きると食事の用意がしてあり、親はもう出勤している。
それが当たり前だと思っていた子ども時代は寂しいと泣きつくこともなく、今思えば随分と可愛げのない子どもだ。