交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
ご丁寧に車が手配されていたが、断って自分の車で丸山が乗る前の車を追う。
小梅には先程、これから丸山副社長と話をするとホテルの場所と共に連絡をした。

あの女のことだから、無理やり俺を陥れようとするかもしれない。死んでもそんなことにはならないよう、小梅に誠実であれるように接するつもりだが、男女が二人でホテルに向かうというのは聞こえが悪い。さすがに丸山も如何わしいホテルを選んだりはしなかったようだが、変に隠したりしない方がいいに決まっている。

小梅から返信はない。現在午後4時半。まだ仕事中なのだから当然だ。ホテルの駐車スペースに車を停め、ロビーに入る。

丸山は会員制のバーの個室を予約したと言って先導して廊下を歩く。
一定の距離を保ちながら警戒心マックスで歩みを進めていると、不意に丸山が止まった。

「ところで深山社長。このホテルに、会員制のバーなんてないんですよ」

「そうですか」

そんなことはとっくに知っている。ここは完全に丸山の息がかかったホテルであり、丸山商事の副社長なら何を言っても言いなりになるんだろう。 だから、俺たちが今いる場所周辺に人の気配は一切ない。
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