交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
丸山が不敵に笑った。その時、背後に人気を感じ、ぬっと手が伸びてきた。咄嗟にその手を掴みあげ床に押さえつける。
俺と同じくらいの背丈をした男だった。手にはハンカチを持っていて、大方薬剤でも含んでいるのだろう。

「あらあら、手荒なことはやめてください」

「どっちが…! 、っう」

あっけらかんとした丸山の態度に顔を上げきっと睨みつけると、一瞬の隙に腹部に鈍痛が走った。
もう一人いたようだ。思い切り蹴り挙げられ、俺が抑えていた男がむくりと立ち上がるのを視界に捕える。隙をつかれたせいで全く受身を取れず痛みに目が眩むが、立ち上がって壁に体を預け応戦する。

「貴様ら、直々に俺を襲うとはいい度胸してやがるな」

「襲うだなんて。私はただ、あなたに気づかせてあげてるだけ。もっと早く私と一緒になることを選んでいればこんな目に遭うことはなかったのに、変な意地を張るからこちらも手段を選ばざるを得なかったのよ」

「誰がっ、お前なんかと。 俺は何度死んだって小梅を好きになる。お前みたいな卑しい底辺の人間如きが俺を手に入れようなんて、愚鈍もいい所だ」

「貴様、麗奈様になんてことをっ!」

嘲笑を浮かべて丸山を見据える。すぐさま俺を殴った男が声を荒らげ、再び拳を向けてきた。
こいつらは丸山の下僕かなにかなのか? まさかこんな、人を殴るのに躊躇もしない愚かな人間を従えていたとは。この女を見誤っていたようだ。
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