交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
俺は両親よりも、祖父と過ごす時間のほうが長かった。

祖父が自分の後を継がせるために俺に経営について教えはじめたのはいつだったか。初めは呪文や暗号でも唱えられているのかと脳が受け入れるのを拒否していたのが、いつの間にか理解するようになり、それを楽しいと感じるようになった。

祖父が俺に話すことといえば、ベタベタに惚れていた祖母のことか、仕事のこと、それと古嵐家のことだった。

祖父がまだ二十代のころのことだ。祖父もまた幼い頃からスパルタ的に後継として育てられていたが、ある時限界が来た。
自分の未来が決められているという圧迫感と重圧に耐えられなかったらしい。
フラフラと当時住んでいた家を出て、父親から逃げるように無心で彷徨ううちに、肉体的にも精神的にも押しつぶされて倒れてしまった。

そこを偶然通りかかり、介抱してくれたのが、古嵐小梅の祖母にあたる女性、桜子だった。
目が覚めたら病院にいた祖父はあと一歩遅ければ死んでいたかもしれないほど危ない状態だったらしく、桜子さんがいなければどうなっていたか分からない。
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