交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
何気なく手に取り、それが名刺だと分かった途端、どくんと心臓が跳ねた。

シンプルなデザインの中央に記された会社名と氏名。

【丸山商事 代表取締役副社長 丸山麗奈】

「お、お母さん…! これ、」

「ん? ああ、それね。今日の昼間、その名刺の女の子がガタイの良さそうな男性を二人連れて急に訪ねてきて、うちと取引しないかって言うのよ」

「まさか引き受けたり…――」

「しないわよ。 一織くんに随分助けられたとは言え、こんなおんぼろのしがない定食屋に目をつけるなんて詐欺かなんかかと思って。私もお父さんも、従業員の子にお金を持ち逃げされてから疑り深くなっちゃってね」

両親の懐疑的な思考にほっとしたのも束の間、先程送られてきた一織さんのメッセージが脳裏を過ぎる。

丸山麗奈がガタイの良さそうな男を二人連れて――

うちの実家に来たのは忠告のつもりで?
一織さんを自分のものにしようと、私や両親に付け入ろうとした?

考えれば考えるほど嫌な予感が止まらない。

一織さんが危ない。
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