交際0日ですが、鴛鴦の契りを結びます ~クールな旦那様と愛妻契約~
二、夫婦を目指して




湿気を含んだ夜風が頬を撫で、私の歩幅に合わせて歩く深山さんの大人で落ち着いた香りが鼻をかすめる。

「先程はすみません……つい、勢いであんなことを…」

「驚いたけど、古嵐さんの機転で契約結婚を円滑に進めることができそうです」

「驚いてたんだ…」

深山さんは真面目な口調で、部下を褒めるみたいに言った。

私の口から出た突飛な展開に、彼は瞬時に乗っかってきてくれた。隙を見せない能力の高さに感服したけれど、内心ではドキドキしていたのかと思うと、見た目はクールな深水さんの人間らしさにくすりと笑いがこぼれる。

「古嵐さん」

「は、はい!」

呑気なことを考えていると、深山さんが立ち止まり、こちらを向き直って私を見下ろす。
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